2014年10月から劇場公開が始まった、グザヴィエ・ドラン監督・主演の『トム・アット・ザ・ファーム』。2015年5月にはBlu-ray も発売されていますが、今日から始まった、元町映画館の『グザヴィエ・ドラン監督特集』でも、上映される予定です。
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孤独は、そして人間の弱さは、どのようにして人の心を狂わせていくのだろうか。
「誰でもよかった」という殺人、こどもの虐待、家族や恋人への暴力、学校や職場でのいじめ……こんなニュースが日々当たり前のように流れている。さまざまな環境、さまざまな理由があるだろうが、どのニュースのからも、”孤独”や”弱さ“が背後にあるような気がしてならない。
この映画に描かれるのも、人を狂気に落とし入れるほどの孤独と弱さだ。
舞台はカナダ・ケベック州の田園地帯。トム(グザヴィエ・ドラン)は、交通事故で死んだ恋人のギョームの葬儀のため、ギョームの実家を訪れる。そこで待っていたのは、ギョームの母親アガット(リズ・ロワ)と、ギョームの兄フランシス(ピエール=イヴ・カルディナル)の二人だ。フランシスは自分の弟がゲイであったことを嫌悪し、トムにギョームの恋人でなく友だちとして振る舞うことを強要する。ギョームは生前、母親にゲイであることを隠し、偽りのガールフレンドについて手紙に書いていたからだ。愛する恋人を失いながら、その苦しみを吐露することができないトム。それ以上に、恋人が自分の存在を隠していた事実に心が引き裂かれる。
牧歌的な風景の中でくり広げられるサイコ・サスペンスには、怖さ以上に”悲しさ”が漂う。暴力によって癒される孤独があるのだろうか。その孤独は、暴力でなければ癒されないほど、強いものなのだろうか。
原作は、劇作家ミシェル・マルク・ブシャールによる同名戯曲。監督と主演はケベック州出身のグザヴィエ・ドラン。なぜ彼は、まるで生き急いでいるかのような勢いで映画を撮り続けるのだろう。その繊細な感性がぼろぼろにすり切れてしまう前に、どこかで立ち止まってほしいと老婆心ながら思ってしまう。ジェームズ・ディーンを、リバー・フェニックスを追いかけてほしくはないと。
[c]2013 - 8290849 Canada
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Palardy
<本ブログ内リンク>
『エレファント・ソング』
ケベック発のショートフィルム(グザヴィエ・ドラン主演作品の紹介も)
<公式サイト>
トム・アット・ザ・ファーム
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