横浜にゆかりあるイラストレーター、柳原良平さん他界のニュースが入りました。
大の船好きだった柳原さんの船への思いとその言葉が、これからもずっと残っていきますよう。
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『プレイ・タイム』( Play Time) その1
--タチヴィルと横浜みなとみらい21--
ジャック・タチ(Jacques Tati)の集大成ともいわれる『プレイ・タイム』(原題:Play Time)。
この映画を観たとき、不思議な懐かしさを感じたのを今でも覚えている。
映画の全編をとおして流れる空気が、とても身近に感じられたからだ。
なぜなんだろう?
しばらく考えた。そして気づいた。
まるで「みなとみらい」を訪れたときのような感覚だったからだ。少なくとも私にはそう感じられた。
横浜・みなとみらい21(MM21)…… 地元の人も、そうでない人も、ここでは同じような距離で迎え入れてくれる。温かすぎず、冷たすぎず、そして高級すぎず、かといって庶民的になりすぎない、そんな不思議な場所。
ジャック・タチは、『プレイ・タイム』の撮影にあたり、大がかりなセットをパリの郊外に建築した。まるでひとつの街のようなこのセットを人々は『タチヴィル』と呼んだ。1967年公開の作品で登場するガラス張りの高層ビルは、21世紀の今であっても違和感がまったくない。むしろ今でこそしっくりとなじむ。当時、「モダン」と表現されたであろう風景の中にも、ノスタルジックなパリがちらりと見える、その瞬間が可愛い。グレイッシュなトーンの中で映える街角の花屋もそのひとつ。
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エッフェル塔と回転木馬(Paris, France) |
『プレイ・タイム』には、遊園地の回転木馬を彷彿させる、素敵なシーンがある。近代化に突き進まざるを得ない私たち。それでも、心の片隅にはちゃんと「こどもごころ」が残っていることをタチが教えてくれているような、そんなシーンだ。
みなとみらいの一角にある小さな遊園地、『よこはまコスモワールド』。入場は無料。アトラクション利用のときにチケットを購入する仕組みになっているため、回転木馬(メリーゴーランド)を間近に見ることができる。回転木馬がさりげなくたたずむ、フランスの街なかのような親近感が嬉しい。回転木馬の前方には、横浜グランドインターコンチネンタルホテルが。ヨットの帆をイメージしてデザインされた曲線と白い外観は、近未来的な魅力にあふれている。この場所に立ったとき、即座に思い出したのが『タチヴィル』だった。
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インターコンチネンタルホテルと回転木馬(横浜・みなとみらい) |
ジャック・タチが天へ召されたのは1982年。『みなとみらい21計画』は、ちょうどこの頃から具体的な動きが始まった。そして1989年、この地でYes’89(横浜博覧会)が開催される。できれば、このときまでタチに生きていてほしかった。博覧会でにぎわうみなとみらいを訪れ、感想を聞くことができていたら、とときどき思う。
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